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「アイ・エイ・アイ」:IAI

山本裕子 


Blue & Green
「ヴァージニア・ウルフ」



玻璃の尖った指先はみな下方を差している。
光はその玻璃を辷りおり、滴って色の水溜りを作る

一日中、玻璃の枝つき燭代の十本の指は大理石のうえにを滴らせる
鸚哥らの羽――耳障りな声――鋭利な棕櫚の葉――それらも
その
の針が陽光の中で燦々と耀く。
けれども堅い玻璃は大理石のうえに滴る。
水溜りは砂漠のあちこちに汎んでいる。
駱駝どもが水溜りを蹌踉ながら通りぬけていく。

水溜りは大理石のうえに降りる。
藺草がそれを縁取る。
水草が繁茂する。
そこここに皓い花が咲いて出る。
蛙がのそのそと這いでる。
夜になれば空にある姿と少しも変わらぬ星々がそこに映る。
黄昏がやってくる。
闇がマントルピースのうえの
を消しさる。
波立つ海面。
船は現れない。
伽藍とした空の下、目的のない波が騒ぐ。
夜だ。
尖った玻璃が青の滴りを落とす。
の退場。


潰れた鼻の巨きな生き物が水面に現れ、
ずんぐりとした鼻に並んだ孔から二本の水の柱を噴きあげる。
水の柱の中央部は
白い炎の色で、泡沫がい小珠の房飾りのように
周囲を彩っている。
い線が黒く厚い皮に幾筋も走っている。
口や鼻孔を水が洒うに任せ、生き物は沈んでいく。
水で重くなる。
は体全体を覆い、磨いた瑪瑙のような眼を覆う。
浜辺に打ち上げられて生き物は横たわる。
蒙く、鈍く、ぼろぼろと乾いた
い鱗を零しながら。
その金属を思わせる
が浜辺の錆びた鉄を染めあげていく。
は打ちあげられた手漕ぎのボートの助材の色。
一叢の
い糸沙参の下で水が揺蕩う。
何より大聖堂の傑れて、冴々として、香りを含んだ
、聖母たちの
被衣の、その精妙な

山本裕子《青と緑》
山本裕子《青と緑》
山本裕子《青と緑》

スペース23゚C
東京都世田谷区中町2-17-23 
Tel&Fex03-3701-5272

2004/2/20〜3/13
展覧会を終了しました。

ヴァージニア・ウルフ(1882〜1941:ロンドンに生まれる。長編小説「船出」
等かずおおくの文学著書を出版。)の詩「
」がテーマとなっている。
今回の個展は、詩「
」から19の東洋的、表象文字が創作されている。
作家の、緻密に計算された英字の線の立体作品に微かな光が射すころ
「存在と時間」全体は美のインスタレーションを醸しだしている。


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